あなたは私のオランジェットの片割れ

 撮影では完成したお菓子は別に用意されていて、杏が作業した分は撮影が終わるともう不要な物になっていた。

(なんだか、もったいないな……)

 お菓子作りが大好きなのに、その途中で手離してしまったそれらは、杏にはまるでお菓子の(しかばね)のように見える。

 ……少し悲しい。

 だから、丁度それを片付けに来たスタッフに思わず声を掛けていた。

「あの! この作りかけの材料、捨てるんですよね? でしたら、いただけませんか?」

「……ああ、ほほえみ製菓の会社の方ですよね? これ元々、御社から提供してもらったものなので、そちらがよろしければかまいませんよ」

 杏はすぐに課長に許可を貰って、『お菓子の屍』を持って帰ることにした。

 生クリームやケーキの作りかけはもう無理だろう。少し乾いてしまったクッキーの種とタルト生地は大丈夫そう。杏はそれらをラップで包み、大事そうに鞄にしまった。

(帰ったら、美味しいお菓子にしてあげるからね)

 その様子を、帰り支度を終えた蒼士が、じっと見ていたが、杏は気付かなかった。





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