あなたは私のオランジェットの片割れ

 扉を三回ノック。返事は無い。「開けるよ」と一言ことわってドアノブを回すと、最初に目に入ったのは畳まれた布団。この部屋にはベッドが無いから、杏がここで寝る時は来客用の布団を使っていた。それが、使っていなかったように綺麗に畳まれている。

 部屋を見回してみたが、そこに杏の姿はない。

「――杏?」

 無駄だとは分かっているが、彼女の名前を呼んだ。もちろん、返事は無い。

 蒼士の身体中から、血の気が引いてゆく。

 (どうしていないんだ?! 何処へいったんだ!?)

 最悪の状況を考えてしまい、心臓がドッドッ、と大きく音を立て始めた。

「杏!」

 さっきより大きな声でもう一度呼んだが、その声は誰もいない部屋の壁に当たって落ちただけだった。

 立ち尽くす事しか出来ない蒼士の目に、壁沿いに置いてある机の上の紙が映った。取り上げて見てみると、そこには杏の筆跡の文字。

『夢を叶えてください。どうか、幸せに。』

 蒼士は呆然とその文字を見つめ続けた。





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