蒼士は暫く考えていた。やがて心を決めたように杏を真っ直ぐに見つめながら言った。
「今回は、オファーを断る事にする」
「そんな! ダメだよ! 蒼士さんの夢なのに、そんなに簡単に決めないで……!」
「簡単に決めた訳じゃない。凄い迷った。でも、杏とお腹の子どもは何ものにも変えられない。俺は、日本に杏と子どもを置いて行く事もしたくない。だから、そうしたいって思ったんだ」
一番恐れていた事。蒼士は優しいから、きっとこうなるんじゃないかと杏は思っていた。
「蒼士さん、妊娠した事も、プロポーズも、私も凄く嬉しい。ありがとう。でも……少し、考えたい」
「考えたい、って、どういう意味? 産むか産まないかって事?」
杏の言葉に蒼士の顔が曇る。
「違う、そうじゃないよ。私も妊娠は嬉しいし、産みたいと思ってる。ただ、蒼士さんの、邪魔をしたくないから……」
「邪魔って?」
「ずっと夢だった舞台なんでしょ? それを断るなんて、ダメだよ……」
蒼士は「ああ、その事か」と言って、なんでもない事のように少し笑った。
「いいんだよ、それは。大丈夫、チャンスはきっとまたある」
「いいわけない!」
思わず杏は叫んでしまった。
「そんなのいいわけないんだよ! 私は蒼士さんの夢を応援したいし、叶えてほしいと思ってる! だから、諦めて欲しくない……!」
夢が叶うと言った蒼士の、輝く笑顔が忘れられない。俯いた杏の瞳から、涙が溢れた。蒼士はその頭をそっと撫でながら言った。
「大丈夫だから、杏は心配しなくていい」
杏は俯いたまま、頭を横に振る。蒼士の口から困ったような溜息が、小さく吐き出された。
「今日はもう遅い。また明日、一緒に考えよう。な? 杏」
「……うん」
そう返事をしたが、杏の心はもう固く決まっていた。
その夜は、二人同じベッドではなく、杏は最初に使っていた別の部屋で眠った。
「今回は、オファーを断る事にする」
「そんな! ダメだよ! 蒼士さんの夢なのに、そんなに簡単に決めないで……!」
「簡単に決めた訳じゃない。凄い迷った。でも、杏とお腹の子どもは何ものにも変えられない。俺は、日本に杏と子どもを置いて行く事もしたくない。だから、そうしたいって思ったんだ」
一番恐れていた事。蒼士は優しいから、きっとこうなるんじゃないかと杏は思っていた。
「蒼士さん、妊娠した事も、プロポーズも、私も凄く嬉しい。ありがとう。でも……少し、考えたい」
「考えたい、って、どういう意味? 産むか産まないかって事?」
杏の言葉に蒼士の顔が曇る。
「違う、そうじゃないよ。私も妊娠は嬉しいし、産みたいと思ってる。ただ、蒼士さんの、邪魔をしたくないから……」
「邪魔って?」
「ずっと夢だった舞台なんでしょ? それを断るなんて、ダメだよ……」
蒼士は「ああ、その事か」と言って、なんでもない事のように少し笑った。
「いいんだよ、それは。大丈夫、チャンスはきっとまたある」
「いいわけない!」
思わず杏は叫んでしまった。
「そんなのいいわけないんだよ! 私は蒼士さんの夢を応援したいし、叶えてほしいと思ってる! だから、諦めて欲しくない……!」
夢が叶うと言った蒼士の、輝く笑顔が忘れられない。俯いた杏の瞳から、涙が溢れた。蒼士はその頭をそっと撫でながら言った。
「大丈夫だから、杏は心配しなくていい」
杏は俯いたまま、頭を横に振る。蒼士の口から困ったような溜息が、小さく吐き出された。
「今日はもう遅い。また明日、一緒に考えよう。な? 杏」
「……うん」
そう返事をしたが、杏の心はもう固く決まっていた。
その夜は、二人同じベッドではなく、杏は最初に使っていた別の部屋で眠った。


