あなたは私のオランジェットの片割れ

 半年後……。

 偽装婚約契約は一年で、もう三ヶ月経っている。あと半年すると九ヶ月。ほぼ終わりが見えている時期だ。もしかしたら、蒼士の仕事の調節が手こずって移住は一年後になるかもしれない。

 その頃、自分はどうしているだろう? 蒼士は、どうするだろう。

 それに……。

 杏は無意識にそっと、自分のお腹に手をあてた。

「杏? どうかしたか?」

 杏の様子がおかしい気がして蒼士は声を掛けたが、彼女は無言で首を振った。

「ううん、なんでもない。でも私、疲れちゃったみたいだからそろそろ寝るね。それと、今日は自分の部屋で寝るから」

 そう言いながら立ち上がった。

「ああ、うん……まあ、もうこんな時間だしな」

 二人で壁に掛かった時計を見上げると、もう日付が変わる十二時を過ぎていた。杏の言動に不自然さを感じたが、遅い時間のせいだろうと蒼士は考えた。

「残ったオレンジケーキ、食べちゃっていい?」

「いいよ。でも、もう遅い時間だからほどほどに! それに明日お休みだからって、あんまり夜更かししないようにね」

「分かってる、おやすみ、杏」

「おやすみなさい、蒼士さん……」

 部屋を出た杏は、足早に自分の部屋へ向かった。

(不自然じゃなかったかな、何か気付かれたりしなかったかな……)

 そんな事を考えながら、杏はまた無意識にお腹に手をあてていた。





◇◇◇