バイト先の黒宮さんがだいぶコワイ

 黒宮さんはっと……。


 ホールを見回すと、一人の男性スタッフが対応中のテーブルが目に入る。


「誠に申し訳ございません。順番にお作りさせていただいておりますので、もう少々——」

「だからぁ、あのテーブルの人よりうちらの方が早く注文したんだけどって言ってんの」

「そうでしたか。重ね重ね申し訳ございません」


「た、大変お待たせいたしました!」

 後ろから声を掛けると、黒宮さんがこちらを振り向き、ぎょっとした顔をする。


『貸せっ』

 口パクで言うと、あたしからお盆を取り上げ、ぱぱぱっとテーブルにお皿を置いていく。

「大変お待たせいたしました。ミックスサンドセットと——ナポリタンセットでございます。一緒にご注文いただいたホットのウインナーコーヒーとアイスコーヒーはすぐにお持ちいたします。では、ごゆっくりお召し上がりくださいませ」


 黒宮さん、ひょっとして自分が受けた注文は、誰が何を注文したか全部覚えてるの……?


 頭を下げ、お客さんに向けた笑顔のままこちらを振り向いた黒宮さんを見て、ひゅっと息を呑む。


「え、あ……」

『さっさと戻れ』

 すっと笑顔を消すと、黒宮さんは先に立って歩いていった。