「そ、そういえば、真子は絶対紙の本派だよね」

 あえて話題を逸らしてみる。

「あったり前だよ! あの1ページ1ページ新しいページをめくるときのドキドキは、やっぱり紙じゃなくっちゃ。それに表紙の材質とか、紙一枚一枚にまでこだわった本だってあるんだから」

「へぇ、本って意外と奥が深いんだねえ」

 なんとなくあたしが相槌を打つと、真子があたしの両手をがしっと掴む。

「わかってくれる⁉ 将来は、小さくてもいいから、わたしの好きな本だけを集めた自分のお店を持つのが夢なの。経営学部だって、そのために選んだし」

「そ、そうだったんだー」


 まさかそこまで将来設計がバッチリだったとは。

 あたしと同じで、なんとなく就職に有利だから、みたいな理由かと思ってた。


「まあでもあの店員さん、イケメンってだけじゃなく、しごできオーラも漂ってたよね」

「ね! そんなところが本当にステキだったよねー」


 なんていうか、ひとつひとつの所作に無駄がないっていうか。

 きっとミスなんて絶対にしないんだろうなっていう感じだった。


「そんな人なら、きっとライバルも相当いるだろうね」

「だ、だよね」


 しまった。そこまで全然考えてなかった。


「それでもめげない自信があればいいんじゃない?」

「ある! よしっ、善は急げっていうし。さっそく今日アプローチしてみるよ」

「彼に、じゃないでしょうねえ」

 真子がジト目であたしを見る。

「お店に! バイトさせてくださいって言うの!」

「ごめん、ごめん、冗談だって。がんばんな。バイトの先輩として応援してる」

「うん! ありがとう、真子」