バイト先の黒宮さんがだいぶコワイ



 カフェバイトを始めて二週間。

 全商品の名前をやっと覚え、イレギュラーなことさえ起こらなければ、なんとか注文から提供、会計までこなせるようになってきた。

 まだスムーズに、とは言えないけど。


「笑顔」

「声がでかい」

「『お客さん』じゃない。『お客様』だ」


 ことあるごとにグチグチグチグチ相変わらず黒宮さんには厳しく指導されていますが、あたしはとっても元気です!

 なんたって、お店で提供しているスイーツが、社割で半額で食べられるんだから!

 うふふっ、今日はなに食べよっかなー。


「毎回食べてたら太るぞ」

「なっ……」


 なんで頭の中で考えてることがバレバレなの⁉

 ほんっとヤな感じ。

 お客様に対しては王子様なのに。


 カラン、カラン。


「いらっしゃいませ。何名様ですか?」

「四人だけど。あ、ちょうど空いてるじゃん。ここいい?」

「えっと……」


 そういえば、この入り口に一番近い席、今日は15時頃まで空けておくようにって黒宮さんに言われてたっけ?

 でも、他の席も結構空いてるし……別にいいよね?

『なんでも聞くな。自分で判断しろ』って最近はよく言われるようになってきたし。


「はい! 空いてますので、どうぞ」


 席に案内してからお冷を取りに行くと、

「おい。あそこは空けておけと言ったはずだが、忘れたのか?」

 黒宮さんが眉間に深いシワを刻んで低い声で言う。

「でも、他のテーブルも空いてるから、別によくないですか?」

 黒宮さんが大きなため息を吐いたとき——。


 カラン、カラン。


 ドアベルが鳴り、一人のお客様が入ってきた。