「あ~ん! らにちゃん! このままじゃ、やられちゃうよ。一体どうしたらいいの!?」
「マジカルロジカルプリンセスはマジカル言語と呼ばれるプログラミングができるらに」
「難しすぎてぜんぜんわからなーい!!」
「えーと、プログラムされたデータベースによるとロジカルマジカルプリンセスは普通の人間が見えないものが見えるようになっているんだらに。さあ、マジカルハッキングであの宝石を奪うんだらに」
「ま、まじかるはっきんぐ? それって正義のヒーローが手からビームを出すような?」
「違うらに! マジカルハッキングとは歌なんだらに」
「う、歌? なんで歌なの? 魔法使いが呪文を唱えるみたいな?」
「声というのは海の波みたいに声が空気を伝わっているんだらに。マジカル言語をつかったマジカルハッキングでニャーちゃんを救うんだらに!」
 わたしたちがテレビを見たりやスマホやパソコンでインターネットができるのは、電波という波を飛ばしているからなんだって習った。わたしもそんなに詳しいわけではないけれどね。
 それにコンピューターを動かしているのはプログラムという機械に命令をあたえる言葉なの。

「で、でも、わたし、歌なんて歌えないよ!」
「そのためのマジカルロジカルプリンセスの衣装らに! ニャーちゃんと友達になりたいって気持ちを込めれば絶対にできるらに!」



 友達になりたいな ロボットだって愛がある

 aiから始まる魔法の言葉


 勝手に胸から口へと言葉が溢れ出てくる。すごい!
 女の子もニャーちゃんも手拍子をしながら体を揺らして、ロボットとか人間とか関係なくみんなが一つになる快感でドキドキワクワク。
 この力がマジカルロジカルプリンセスの力なんだね!
「にゃああああっ~」
 すっかり戦意を喪失し、とろけるようなにやけ顔のニャーちゃん。
「ふふっ、この宝石はいただくよ、ニャーちゃん」

⭐︎パズルを解いてニャーちゃんから宝石を奪い取ろう⭐︎

 一件落着かと気を緩めていると、わたしの背後から手を叩く乾いた音がした。

「素敵な歌だったよ」
「お姉さま!」
「ヒカリ、迎えにきたよ」
 この人、あの子のお姉さんなんだ。ボーイッシュな髪形で色が白く、超まつげが長い。おまけに背も高くてすらりとした足。
 こんな人が本当にいるんだ……クラスメイトの女の子とはカワイイのレベルが違う。年上かな。品のある黒いリボンのセーラー服を着ている。
「ところできみ」
「え、わたしですか!?」
「そのかわいい服は、なにかのコスプレ衣装なのかな?」
 ああああっ! 普段とまったく違う格好に変身していたんだった。よりにもよってこの姿を初対面の人に見られるのって恥ずかしい。
「お姉さま、コスプレじゃありませんわ。ヒーローなんです! それも本物なんですよ!」
 ヒカリちゃんありがとう。とってもいい子じゃない。
「ははっ、冗談さ。妹を助けてくれてありがとう。実はちょっと見ていたんだ。とってもかっこよかったよ。ところで、ロジカルマジカルプリンセスっていう言葉は初めて聞いたけれど、きみはプログラマーかなにかなの? 相棒はとても高性能なマシンみたいだけど」
 うーん、どうだろう。パソコンとかスマホみたいなコンピューターは好きだけど、それほど詳しいわけじゃない。らにちゃんだって半分以上ママがつくったようなものだし。

「わたしにもわからないんです」
「そうだったのか……あっという間にロボットのプログラムを直してしまうのも見ていたよ。君にはふつうの人には見えないものが見えるのかもね」
「ええっ!! な……なんですかそれ?」
 この人、まさかほんの少し見ていただけでおしゃれハッカーの力がわかったの?
「お姉さま……そっちのお姉ちゃんはね、ママのネックレスも直してくれたんだよ!」
「妹のヒーローなんだね。だけど、きみはこれ以上首をつっこまないほうがいいよ」
 さっきまではとっても優しかったのに、なんだか少し棘のある言い方。
「それって、どういう意味なんですか?」
「ごめん。ちゃんと説明しないと納得できないよね。妹のお礼もあるし教えるよ。隠すようなことでもないからね。現在、大量に不法投棄された高性能コンピューターやロボットを使って悪さをしようとしている人間がいることがわかっているんだよ。さっきみたいな小さなイタズラから大きな事件までね。僕はそれを解決する手伝いを警察にお願いされているんだ」

 よくSFでロボットが人を襲うなんてお話があるけれど、やっぱり一番怖いのは人間ということなのかな。捨てられたロボットを使って悪さをしている人がいるんだ。
「わかるかな、きみはとっても危険なことに首をつっこもうとしているんだ。僕はみんなを守りたい。誰かが傷つくのはいやなんだ。妹の恩人ならなおさらね」
 とっても正義感が強くて真面目な人なんだ。かっこいい。
「でも、それって、人もロボットも不幸になるってことですよね……」
「そうだね……」
 人間がロボットを捨てるから、人間の社会も壊れるっていうことなのかな? 生態系とちょっと似ている。
「わたしも謎を解明したいです! 何が起こっているのか、もっと知りたい!」
「子供がたった一人でここまでつきとめるだけでも大したものよ。だけど、もうやめた方がいい」
 この人はばっさりとわたしの願いを断った。
「そんな、あなただってわたしとそんなに歳は変わらないじゃないですか!」
 あ、しまった、ちょっと生意気だって思われちゃったかな。
「強い想いがあるんだね……。そこまで言うのなら、僕にきみの実力を見せてくれないかい」
「実力?」
「今夜、四葉町の宝石店をロボットが襲う。君の家を訪ねるから、やる気があるなら警察に協力してくれ」
 それだけ言うとヒカリちゃんの手を引いて校門へと歩きだした。
「待ってください! お姉さま! なんでそんな冷たいことを言うのですか?」
「ヒカリ、これは彼女のために言っているんだよ」
 ヒカリちゃんたら振り返って心配そうにわたしのことを見てる。お姉さんに似て優しい子なんだね。
「ヒカリちゃん、また遊ぼうね!」
「ありがとう! お姉ちゃん! らにちゃん! またいっしょに遊んでね!」

 実はさ……もし幽霊がいたらママに会えたかも、なんてこころのどこかで思っていた。 論理的に考えてありえないけれどね。幽霊はいなかったけれど、調査してよかった!
 これからもヒカリちゃんと気持ちよく遊ぶために事件を解決して、あの人からも認めてもらわないとね!
 それに、ロボットを悪いことに使うなんて本当に許せないもん!!!