「おまえみたいなトロくてダサいやつには捕まらないニャ!」
 むっ、ロボットにまで馬鹿にされるなんて!
「返しなさい! それはあの子とお母さんにとって大切なものなんだから! あなたにもこころがあるならわかるでしょう!」
「そんなもの、ロボットにあるわけないニャ。本当にバカな人間だニャ!」
 痛いっ、避けるときにひざをすりむいちゃった。もう、服は汚れるしサイアク! 洗濯するのはわたしなんだからっ! それに、こころがないってどういう意味よ。
「あるよ、きみにもこころはある! 本当はそんなことしたくないんでしょう? 知っているもん、ものにだって魂が宿るんだ!」
「ボクのことなんて何も知らないくせに生意気ニャ!」
「きゃあっ!」
 攻撃を避けるだけで精一杯。どうしたら、わたしの気持ちを伝えられるの? たしかに、わたしにはロボットの気持ちもこころの仕組みも説明できないけれどさ。
「ロボットのことなら、ロジカルマジカルプリンセスにおまかせらに!」
「ロジカルマジカルプリンセス? それは一体なんだニャ!?」
「ちょっと! ロジカルマジカルプリンセスってなんなのらにちゃん!?」
 女の子はネコのぬいぐるみロボットを怖がって、わたしの背中でじっと隠れている。
「マナちゃんはマジカルロジカルプリンセスなんだらに! 名付けたのはマナちゃんのママだらに! これはマナちゃんのママがマナちゃんのためにつくったプログラムなんだらに」
 そういうことか。らにちゃんはおしゃれが好きなママのパソコンでつくったのだものね。
「マジカルロジカル、おしゃれになーれって唱えるんだらに!」
 なにそれ? そんなの本でも読んだことがない。というか、ちょっと恥ずかしい。
「だいじょうぶらに! マナちゃんのお洋服のデータはボクの中にあるらに!」
 迷っている暇はなさそう。こうなればやけよ!
「マジカル!ロジカル! おしゃれになーれ!!」
 らにちゃんを手のひらに乗せて呪文を唱えると、らにちゃんが光って、光の束がわたしの周りを包み込んだの。ママに抱かれているようなぬくもりがした。

⭐︎マナちゃんをシールで変身させてあげよう!⭐︎

「ええっ!? 信じられない……」
 あっという間にわたしのお洋服がぜーんぶ変わってしまった。どういう理屈なのかわからないけれど、アニメの中の女の子が変身してドレスを着るように、一瞬で服装が変わっちゃうのよ。まるで最初からその服を着ていたみたいに。
 白いマントにピンク色をした制服。でっかいリボンのついたおしゃれかわいいスカート。派手すぎないように控えめな三日月のアクセサリーと透明なフリルが大人っぽくてクールな感じ。
「あれ!? らにちゃんは?」
「肩にいるらに」
「ええええっ!!」
 戸惑うわたしとは正反対に小さな女の子はテンションが上がっている。
「お姉ちゃんすごーい! 正義の味方なの?」
 ふふ、正義の味方になるのは悪くないかな。
「ロジカルマジカルプリンセスのマナちゃんの誕生らに!」
「よーし! わたしがニャーちゃんのプログラムを直してあげるわ……ってどうしたらいいの!? 武器とかないし!」
「ニャーちゃん? まさかオレのことかニャ……名前が適当すぎニャ。いっておくけどプリンセスだろうが手加減はしないニャ」
 ニャーちゃんが怒ってる!! 万事休すだよね。でも、なんだろう、ニャーちゃんにさっきまでついていなかったはずの首輪が見える。それも、キラキラと輝く真っ赤な宝石の埋め込まれた首輪。あれが弱点なのかな?
「くらえニャ!」
 ふふ、こういうのは変身すると超人的パワーで戦えるっていうのがパターンよね。
「ええっ!!」
 激しく弾き飛ばされるわたし。そんなバカな! 洋服が丈夫なだけでスーパーヒーローにはなれないみたい! どうすればいいのよ~!