光の向こうへ


アイスを食べ終わった後、兄は提案した。
 「少し歩いてみるか?」
 咲は迷いながらも頷く。ゆっくり、ゆっくり歩く二人。
 道端の花の匂いをかぎ、遠くの空を見上げる。

 途中で咲は立ち止まり、深呼吸をした。
 「……風が気持ちいいね。走れなくても、これなら外に出られる」
 「そうだな。無理はしなくていいんだ」

 それでも、兄の胸には緊張があった。
 少し歩いただけで息が上がる咲の姿を見ると、治療の副作用や今後の不安が頭をよぎる。