《天使さま》から始まった

「警察はアテにはならん!半田君、君の力で何とか!頼む!」

 校長は立ち上がって机に手を付くと《天使さま》に頭を下げる。他の先生達も、「何で」という顔をしながらも立ち上がって《天使さま》に向かって頭を下げた。

 どうするの?

《天使さま》は閉じていた目をゆっくり開く。

「わかりました。しかし、私はまだまだ未熟で若輩者。どこまでご期待に沿えるかわかりませんが善処します」

 顔を上げてホッと安堵の息をついて着席した校長に、

「1つ、お伺いしてもよろしいですか?」

「何かね」

「この学校が建っている場所のことです」

 笑顔で答えた校長の顔が凍りつく。

「この辺りは以前、「都」と呼ばれたほどの栄えた所でした。ちょうど学校が建っている場所は、木々が生い茂った山があった場所です」

《天使さま》はそんな校長にお構いなしに話を続ける。

「しかも、それはただの山ではなく、この世に厄を為す悪霊を封じ込めるために建てられた祠を祀った特別な山だった、と何かの書物で読んだことがあるのですが、その事について何かご存知ありませんか?」

 何もかも見透かすように、まっすぐ校長を見つめる。

 悪霊を封じ込めた、祠?

 何だろう。その言葉が胸をざわつかせる。