《天使さま》から始まった

「詳しい話を聞かせていただけますか?」

「あっ、ああ」

 校長は《天使さま》の声に我に返ったようで頷く。

「これから話すことは混乱を避けるためにも、他言無用で願いたいのだが」

「わかりました」

 私も頷いて同意する。

「実はー」


 
 校長の話は、私の考えを遥かに上回る衝撃的なものだった。

 いなくなっているのはいずれも天使さまを招き入れているとされている生徒達で、帰宅していつも通りに過ごしていたが、翌朝には姿がなく、長い人でもう二週間以上見つかっていないらしい。

 それがこの冨島高校だけでもすでに十件以上二及び、しかも近隣の中学や高校でも似通ったケースが報告されている、

と校長は力なく俯いて言った。

「招き入れたものに憑依されたか、或いは何らかの暗示をかけられたか。
いずれにしろ、早急に見つけ出さねばならんな」

 《天使さま》が一人言ちる。

「そこで本題なんだが、半田君に彼女等を見つけ出してもらえないだろうか」

 見つけ出す?

「無理に決まってるじゃないですか!そういうことは警察に任せておけば!」

「警察は、我々が近隣の学校でも酷似したケースが報告されているといくら説明しても、取り合ってもくれなかった!」

私の言葉をピシャリと遮り一蹴した。