《天使さま》から始まった

「ワシは半田君を呼んでこい、と言っただけのはずだが?」

 その高圧的な声に、いつも私達に説教してる人と同一人物とは思えないくらい、大田先生は肩をすぼめて小さくなっている。

「大田先生が捜されていたのは私一人です。砂山さんを一緒に、とお願いしたのは私なので、お叱りなら私が受けます」

 やっぱり佳奈の雰囲気が違う。これは《天使さま》を占ってる時に似てる。

 佳奈はそんな私の視線に気付いたのか、

「お前が思っている通りだ、美織」

 やっぱり!

 佳奈、じゃなくて《天使さま》はそう言って私に笑みを向けると、改めて校長達に向き直ったと同時に、その顔からは一切の表情が消えた。

「私を呼び出したのは、ここ最近、《天使さま》を招き入れてるとされる生徒がいなくなってるいることと関係していますか?」

 思ってもみない言葉に固唾をのむ。

 まさか、と思って校長達を見ると、それを肯定するかのように顔が強張っていた。

「それじゃあ、箭崎さんや河森さんは⋯⋯」

 一週間ほど前から休んでいるクラスメイトの顔を思い浮かべる。

 確かに二人は「霊媒体質だから」って《天使さま》を招き入れていたっけ。

 それに他のクラスでも何人かずっと休んでるって言ってるのを聞いた。

 みんな、いなくなってたなんて⋯⋯。