《天使さま》から始まった

　私も前世っていうものに興味があって、親友である佳奈にこれから占ってもらうの。楽しみだなぁ。

「最初に言っておくけど、たかが占いだからって軽い気持ちで聞こうって思ってるなら、私は占えないわ」

　二人きりの教室で夕日を背にした佳奈の表情はいつなく真剣で、グランドから聞こえるはずの声も遠くなって心臓の音がうるさいくらい頭の中で響く。

　どれくらい経っただろう。困惑した表情を浮かべてる私をジッと見つめていた佳奈の唇が、ニィって弧を描いて、

「脅かせすぎたかな？」

「もっ、もう佳奈、酷い！あぁ、心臓バクバクいってるよ！」

　左胸を押さえて頬を膨らませる。

「ごめんごめん。私が占う以上は真剣に聞いて欲しいからさ。ちょっと意地悪しちゃった。さて、仕切り直して、視(み)るね」
　
　佳奈の顔つきが変わる。この目をする佳奈を見るのは何度もあったハズなのに、不思議と懐かしさを感じる。

「美織の前世はーー」


　
　今思えば、この時から私の運命の輪はゆっくりと、そして確実に、定められた方向へと廻り始めていたのかもしれない。