《天使さま》から始まった

 次の日から、佳奈と私は学校周辺を歩いて回っていた。

 佳奈曰く、土地特有の「場」の力と「気」の流れをしらべてる、って言うんだけど……。

 私にはさっぱり。

 ⋯⋯っ!!

 振り返る。

 誰もいない⋯⋯。

「美織?」

 急に立ち止まった私を訝しげに佳奈が声をかけてきた。

「ううん、何でもない。気のせいだったみたい」

 佳奈に追い付いて横に並んで歩く。

「今の視線、感じたんでしょ?」

「えっ!?佳奈も?」

 私がもう一度振り返ろうとしたら、手を繋がられて制される。

「私達が気付いてることを相手には悟られたくないから。
 元々あの日から何人か見張りが付いてたのは知ってたけど、さっきのは尋常じゃないくらいの殺気だったわね。ただの見張りだから何かするわけじゃないから安心して」

 繋いだ手をギュッと握る佳奈の手の温かさに、強張った身体がほぐれる。

 佳奈は校舎の時計を見上げると、

「昼休み終わっちゃうね。そろそろ教室に戻ろっか」

 私の手を引いて歩く佳奈を頼もしく思いながら歩き出す。