黒百合の女帝

 後日、彼女は再び嶺春倉庫までやってきた。

 「ユウヒさん、ならびに嶺春の皆さん、本当にありがとうございました。つまらない物ですが……。」

そう言いながら、彼女が紙袋を差し出す。

その紙袋には、有名な和菓子の名前があった。

 「わざわざありがとうございます。俺としては、ユリさんが無事で何よりです」

菓子を受け取り、側の机に置く。

すると早速トシアキが飛びつき、中身を食べ始めた。

ユリさんに大変失礼な行動だが……

先日の功績と、彼女の笑顔に免じて見逃すか。

訪れた平和に和みながら、あの日を振り返る。

結果として、ストーカーは無事捕まった。

ユリさんのご両親も、翌日駆けつけたらしい。

警察から連絡が来た時は心配した、と怒られたそうだ。

色々と丸く収まってよかった、と彼女の方を向く。

 「これからも、なにかあれば遠慮なく頼ってくださいね」

緩みきった表情で、そう言えば。

彼女はどこか恥ずかしそうに、口を開く。

 「えっと……我儘かもしれませんが、一ついいですか?」

 「早速頼み事ですか?任せてください」

 「いえ、できたらなんですが……。」

そう口籠もり、息を一つ吐くユリさん。

そんなに言い淀むほど、難しい依頼なのか?