黒百合の女帝

 原因はおよそ三十分前までに遡る。

学校帰りに人気のない場所を歩いていた時。

スマホから顔を上げると、目前に男が一人。

後ろにも男が居て、車に乗せられた。以上。

無論、私が本気になれば逃げられた。

だが、今回はわざと攫われることにした。

私を狙う、不届き者を捕らえる為に。

そして現状、空き家と思しき家に囚われていた。

椅子に括り付けられ、手足も縛られている状況。

手首の結束バンドを弄りながら、相手を睨む。

怯えつつもプライドを貫く嶺姫、の演技だ。

 「あなたたちは私と協力したいの?」

 「は?だからそう言ってんだろ」

 「なら、こんな真似をしなくても良かったでしょ?堂々と交渉することも出来た。」

まあ、訊かなくても想像は出来るが。

彼らは私の情報を大まかにしか得ていない。

だからこそ、私が嶺春と縁を切った確信がない。

それは図星だったようで、男は舌打ちを打った。