黒百合の女帝

 「お前が黒崎百合か?」

建物に入ってくるなり、男はそう尋ねた。

その問いに、俯いたまま口を閉ざし続ける。

すると男は苛立ったように椅子の足を蹴った。

それにより、椅子に拘束された私も揺れる。

 「答えろっ!」

 「は、はいっ。」

怒号にうんざりしつつ、怯えた態度を心掛ける。

それと同時に、相手の男を見定めた。

結果、安っぽい不良であると判明。

脅威でもない。まさか頭じゃないだろうな。

内心冷めた目で、相手の溶けた歯を眺める。

大体わかったところで、演技に集中した。

 「私に何の用ですかっ、もう嶺春と私にはなんの関係もありません。」

わざと震わせた声に、男は大声で笑った。

 「それでいいんだよ。なあ、俺らと協力しねえか?嶺姫」

する訳ねえだろ、クソチンピラ。

睨みを効かせながら、胸中で吐き捨てた。