黒百合の女帝

 シャッターを開けたのは、カナルだった。

間近で見ると、がたいの良さが目立つ男だ。

その上顔も厳ついので、高校生には見えない。

が、驚いた表情は年相応にも見えた。

 「麓冬か?まだ50分前だぞ。それに、連絡してくれたら裏口を開けてたのに」

 「カナルさんですか?お手を煩わせるわけにはいかないと思って。あ、つまらないものですが」

 「ああ、ありがたく頂こう。それから、早く中に入ったらどうだ」

彼は菓子を受け取ると、私たちに背を向けた。

カヤと顔を見合わせてから、店内に入る。

中にはソファと机、本棚くらいしかなかった。

見回していると、カナルが苦笑を浮かべる。

 「古いだろ。祖父さんの画材屋を追っ払って、使わさせて貰ってるんだ」

 「へえ、立派だと思いますが。」

 「おい、お前」

私の世辞を遮るように、カナルが声を上げる。

その視線は、明らかに私を捉えていた。