黒百合の女帝

 早速、りゅうくんが殴りかかってきた。

思わず、反射的にそれを避けてしまう。

それでも、りゅうくんの攻撃は止まらない。

必死で受け流し、傷つけないように気を付けた。

が、僕は誤って彼を腕を殴ってしまった。

 「あっ、りゅうくん、ごめ」

 「ざけんな。裏切ったくせに、なにがごめんだ」

怒りを孕んだ叫びと同時に、頰が熱を帯びる。

一瞬、頭の中が真っ白になった。

痛みが遅れてやってきて、ようやっと理解する。

りゅうくんのパンチ、実際に受けるとこんなに痛いんだ。

間抜けなことに、浮かんだ感想はそれだった。

僕はいつの間にか泣いていた。

それは殴られた部分が痛かったからじゃない。

口に砂が入って、悔しかったからじゃない。

今、急激に崩れる何かを目の当たりにしたから。

もう、取り返しがつかない。終わりなんだよ。

そんな独白は、ユリちゃんの声な気がした。

その時、僕の中の躊躇は燃やし尽くされた。