黒百合の女帝

 「綺麗に撮れてるね。あ、ラクアの写真は公開しないから安心して。」

ユリはスマホを仕舞い、ドーナツを一口食べる。

すると表情を更に緩ませ、美味しい〜と呟いた。

俺も飲み物を口に含み、味を確認する。

うん。味覚が感じられる程度に落ち着いてきた。

 「さっぱりしていて美味い」

 「へえ〜。私のも美味しいよ!一口いる?」

その言葉に、思わず目を見張る。

カヤのみならず、俺にまでは可笑しいだろう。

もしや、彼女は距離感が狂っているのだろうか。

 「あっ、ちゃんと口付けてない所だから大丈夫だよ!」

そんなことはなかった。距離感を弁えている。

安堵する反面、やはり俺は無理なのかとも思う。

面倒臭い男なのを自覚しながら、掌を広げた。