黒百合の女帝

 身勝手な欲を抑える為、彼女から顔を背ける。

今は丁度、鷲座の解説をしているところだった。

 『ギリシャ神話では、鷲の正体は大神ゼウスだと言われています』

ゼウス。ギリシャ神話における最高神。

そんな大神が、美少年を誘拐する為に化けた姿。

が鷲らしい。因みに美少年は水瓶座になった。

そんな話を聞いたら、また隣を気にしてしまう。

もし、ゼウスのように連れ去る事ができたら。

そうしたら、少しは悩みも減るだろうに。

結局、終始夜空に見入る事はできなかった。


 「ラクア、このまま帰る?」

上映が終わり、彼女がシートから立ち上がる。

どうやら、先程の事を気にしているようだ。

彼女の浮かない顔を見ると、胸が痛んだ。

ここ数日、俺から拒絶していた分を返さねば。

俺もシートから腰を上げ、彼女の手を取る。

これくらいなら、許してくれる……だろう。

 「カフェに、寄って行っても良いか?」

そう尋ねれば、彼女の表情が徐々に変化し。

やがて、いつもの上機嫌な顔になった。

 「うんっ。一緒に食べよ!」