黒百合の女帝

 「あ……ごめん。私、一人でテンション上がってた。ラクアと話すの、久しぶりだったから。」

弾むような口調は一変し、独り言の様になった。

俺は不機嫌になっているのではない。

ただ、心が異常な程に不安定なのだ。

分析し切れない程の感情が、混合している。

腹の底で蠢くそれを、無闇に語るべきじゃない。

そんな自制心で、彼女と会話できないだけ。

にも拘らず、二人分の席は沈黙で満たされた。

どう声を掛けるか、何度も口を開き掛ける。

しかし声を出す前に、上映が始まってしまった。


 上映中は、星座の神話が淡々と紹介された。

しかし俺の視線は天井ではなく、隣に行く。

薄暗い中、彼女の綺麗な横顔を捉える。

その耳に下がる影は、指輪のようなイヤリング。

それを見ると、引き千切ってやりたくなるのだ。

勿論、それは嫉妬が生み出した想像に過ぎない。

他にも彼女を抱き締めたいし、罵倒したい。

本当は、そう思うこと自体がいけないのだが。