黒百合の女帝

 視線の先には、彼女の両耳で泳ぐ海月が。

それは、ラクアのピアスの色違いだろう。

彼女は俺よりも、ラクアに心を許している筈。

例の嶺春の話も、前置きは『ラクアには既に言ってるんだけど』だった。

ハラすら知らない事を、彼には伝えている。

ということは、ラクアは特別なんじゃ?

まず、彼女はピアスの穴を開けていない。

しかし、彼女は特に気にしていない様子だった。

 「ああ、これ?別に良いよ。これ以外も欲しかったんだ。」

 「でも、ピアスの穴は?」

 「イヤリングコンバーターでも買えば良いよ。」

そう言い、彼女はピアスを選び始める。

そして店内を一周し、あっと声を上げた。

 「これ良いんじゃない?ほら見て、カヤにもきっと似合うよ!」

ピアスを手に取り、無邪気に笑うユリさん。

その笑みは、到底彼女のものとは思えなかった。

取り敢えず俺も微笑み、その商品を確認する。

ポップにはご丁寧に『カップル向け』の文字が。

確かに、俺が付けても恥ずかしくないデザインだ。