黒百合の女帝

 「あの事件……サクラちゃんがイジメられてるって話。ちょっと、信じきれないんです」

そんな彼の主張に、更に鼓動が煩くなった。

俺と同じだ。あの件を、ずっと引き摺っている。

ユリを信じたいが、サクラのことも信じたい。

できるならば、またみんなで仲良くしたい。

そんな平和を望む姿勢が、俺たちを混乱させる。

だって、現状はもっと複雑なのだから。

しかし、ヤユはよくても俺はダメだ。

総長の俺は、そんな甘い考えは捨てなければ。

ミヤビの言う通り、仕事に支障が出る。

そこまで胸中で呟き、顔を上げる。

まずは、ヤユの話を聴かなければ。

 「続けていいぞ」

 「あっはい。それでユリちゃんがいなくなってから、寂しくなっちゃって。それに、気まずい的な」

最後の方は語尾をぼかし、目を逸らす。

そんな彼の話に、心当たりはいくつもあった。

幹部間の不穏な空気、目立ち始めた亀裂。

それらにヤユは、嫌気が差してしまった。