黒百合の女帝

 「なにか飲むか?コーヒーか緑茶しかないが」

 「いえっ、時間はかからないので大丈夫です」

彼の返事にそうか、と返し、冷蔵庫を閉める。

そしてソファに座ると、緊張が場に流れた。

真正面に座るヤユは、モジモジしている。

何を言い出すのか、全く想像ができない。

ケーキ買ってきた、とかなら嬉しいんだが。

まあ、この様子でそれはないか。

 「で、要件はなんだ?」

 「実は、その……嶺春を辞めることにしたんです」

……は?え、なんで?

本当に予想外だった。開いた口が塞がらない。

心臓が嫌な音を鳴らすが、なんとか平静を装う。

ユリの時みたいに、俺が原因なのか。

そんな酷い回答を恐れながら、問い掛けた。

 「……理由は?」

その声は、震えを抑えきれていないだろう。

ヤユにそのことがバレていなければいいんだが。

などと祈っていれば、彼は息を吐いた。

そして真剣に、俺の目を見ながら話し始める。