黒百合の女帝

 「今、麓冬には内密者が紛れ込んでいる。でも、それが誰かは不明。」

そう言うと、彼女はカヤさんに目配せをした。

彼はそれに応えるように、首を縦に振る。

 「今のところ、怪しいのが二人。そいつらの尾行を頼みたい」

 「えっ、僕にですか?そういうのはやったことがなくて……」

僕の仕事は、戦うか教えるかの二択。

そういう難しいことは任された経験がない。

失敗したら、みんなに迷惑かけちゃう。

と心配していれば、柔らかく微笑むカヤさん。

 「大丈夫だ。基本的に、情報収拾は別の担当がいる。気軽に考えてくれ」

僕を安心させようとしてくれている。

その気遣いが直伝わり、胸がぽかぽかした。

僕は、カヤさんから期待をかけてもらっている。

それに、ユリちゃんからの頼みごとだ。

彼女を傷つけた身として、返事はただ一つ。

 「わかりました!はじめての尾行、がんばります!」