黒百合の女帝

 ……あ、そっか。そういうことか。

僕は、来るべきじゃなかったのか。

だって、隣に座る彼女は暗い顔をしている。

僕は自己満のために、彼女の傷をえぐっている。

ようやっと、それに気付いた。

 「……ごめんなさい、帰ります」

カバンを掴み、椅子から立ち上がる。

そして扉まで向かい、取っ手を掴んだその時。

 「待って。」

という力強い一言が、僕を引き止めた。

振り向けば、そこには真剣な表情のユリちゃんが。

 「わざわざここまで来て、置き土産は必死の謝罪?ふざけないでよ。」

ゆらりと立ち上がった彼女が、僕の元まで迫ってくる。

そして僕の両肩を掴み、俯きながら息を吐いた。

まるで、幽霊のような姿だと驚けば___


 「私が言って欲しかった言葉は、ごめんなんかじゃない!」

突然部屋に響いた、力強い大声。

その声を上げた人物は、言わずもがな。

あの、ユリちゃんだ。

でも、こんなユリちゃんの声は初めて聞いた。

あの日、みんなから糾弾された時も。

恋人である、総長と別れた時も。

ずっと、彼女が声を荒げることなどなかったのに。