黒百合の女帝

 お兄ちゃんの暗い声に、思わず目を見開く。

聖蓮は、元は僕を除き20人も居た。

なのに、今通っているのはその半数以下。

でも、倉庫に全員が毎日来るわけじゃない。

だから、なんとも思っていなかったのに……

 「あの日、聖蓮の大半が大怪我を負った。むごい有様だったよ」

 「えっと、あの日って……?」

 「麓冬の奴らが、攻め入ってきた日だよ」

お兄ちゃんの、地に響くような低い声。


 それで今までの疑問が、一気に晴れる。

なぜ、お兄ちゃんは麓冬を狙っていたのか。

なぜ、みんなカケルを恨んでいたのか。

麓冬は気の毒な小規模の族なんかじゃない。

狙われるべくして狙われている人たちだった。

口元を掌で覆い、浅く息を吐き出す。

カケルは敵に寝返った裏切り者で。

僕は何も知らずに、彼に付いていったアホで。

お兄ちゃんに情報を渡し、罪悪感を抱いていた。