黒百合の女帝

 二日前。久しぶりにここへやってきた時。

みんなが恐ろしい顔で僕を迎えた。

初めてのことに震えていれば、兄が一言。

 『お前、聖蓮を裏切ったのか?』

今まで聞いた事のない声音だった。

僕は、兄に殺されてしまうのかもしれない。

そう危機感を覚えるほどの凄みがあった。

それに対し、どう答えたかは覚えていない。

ただ、兄の悲痛な声だけは脳に刻まれている。

 『お兄ちゃんのためなんだろ?なあ、レント』

違うと言えば、全てが壊れてしまう。

そんな気がして、無意識にも頷いていた。

麓冬の情報を話して、兄に褒めてもらって。

それでも、正体不明の喪失感は消えなかった。

今でも麓冬の情報を喋り続けている。

これを拒絶したら……

お兄ちゃんとは、どうなってしまうのだろうか。