【改稿版】幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。

「真宮くん」
「は、はい……」
「私は今から穂鷹社長に罠を仕掛けるがね。おそらく真宮くんに電話がかかってくるだろう」

　それを聞いて、ドキリとする。

「申し訳ないが……電話に出て社長の出方を窺ってほしい」
「どのようにすれば……」

　できれば出たくはない。けれど、安浦先生と桐人さんがそう考えるのなら、信じるしかなかった。
　
「普通に会話してくれて構わない。ただし、どこにいるかは言わないこと。そして、出版記念パーティーに同席してほしいと言われたら、絶対に断ること」
「えぇと……」
　
　意図がわからず、私は目を瞬かせた。
　
「つまり、ドッキリですよ。真宮さん」
「そのとおり。私が、社長に真宮くんと同席してもらうように言えば、きっと血眼になって真宮くんを探す」
「見つからなかった元婚約者は、小説を書き上げて出版記念パーティーに出席する……。安浦栄次郎の弟子としてね。これくらいの仕返しなら、可愛いものだと思いませんか？」
「そう、ですね……」

　復讐なんて、大それたものは望んでいなかった。
　だけど、ほんの少し見返すことができれば、私の心も晴れるかもしれない。