【改稿版】幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。

 *

「さて、具体的にはどうしようか?」

 桐人さんが、ワクワクしたような顔で切り出す。
 だけど、私は報復までは考えられず、まだ複雑な気持ちだ。
 
「こら桐人、焦るんじゃない。真宮くんの気持ちが最優先だろう……」

 安浦先生が、嗜める。

「そうだね。さっきも言いましたけど、どうしたいかを決めるのは、真宮さんです」

 二人の視線が、こちらを向く。
 裕貴を見返したい、という気持ちはある。
 だけどその前に、ひとつだけ確かなことがあった。
 
「私は……。小説を完成させて先生に見ていただきたい。それだけなんです」

 そうだ。そこだけは譲れない。
 だから私は、裕貴から離れようと家を飛び出したんだ……。
 それを聞いた二人は、頷いてくれた。

「でも……」
 
 しかし、それには問題があった。住むところの問題だ。
 私は裕貴と同棲していたから、家には戻れない。
 かといって、実家に戻ることもできない。裕貴は幼馴染だから、私の両親とも顔馴染みだ。あの外面の良さで、私の両親も言いくるめられてしまう可能性がある。

 思い悩んでいると、桐人さんが私の肩に触れて言った。

「心配ごとがあるなら、遠慮せずに言ってください」