【改稿版】幼馴染との婚約を解消したら、憧れの作家先生の息子に溺愛されました。

 先生の前では、よく我慢した。
 でも、もうダメだ、拭っても拭っても溢れてくる。
 ここにいると、裕貴に見つかるかもしれない。
 早くこの場を去ろうとした時、桐人さんと鉢合わせてしまった。
 
「……真宮さん?」
「ど、どうも……!」

 泣き顔を見られたくない。
 俯いて挨拶だけして立ち去ろうとすると、

「待って!」

 桐人さんは私の腕を掴んだ。
 驚いて顔を上げると、真剣な目で私を見つめている。
 口を開けば涙が滲みそうで、何も言えず言葉に詰まる。
 すると、彼は有無を言わせぬ調子で私を引っ張り、思わず足がついていった。