▽
「渚……!」
走って追いかけると、渚はめんどくさそうにしながらも、立ち止まってくれた。
そのことに、ひとまず安堵する。
だけど、渚と向き合ったとたん。
どうしよう、なにも浮かばない……!
頭が真っ白になる私だったけど。
……ううん。難しく考える必要はないんだ。
今はただ、素直に自分の気持ちを伝えよう。
ひと呼吸して、気持ちを落ち着けた私は、
「……渚に、マネージャーになったのは逃げだって言われて、最初はそうなのかもって思った。だけど、ついさっき違うって分かったんだ」
黒川にありがとうって言われて。みんなの笑顔も見られて。こんな私でも、みんなの役に立てるんだって、うれしくなった。
栗林との約束で、試合に負けたらマネージャーをやめることになっていたけど。
今は、マネージャーをやめずにすんでよかったって、心の底から思ってる。
「マネージャーは、私がやりたいと思ったから、やるの。今度は、みんなに迷惑をかけるんじゃなくて、チームの一員として貢献できるようにがんばりたい!」
声に出して宜言すると、自分がどうなりたいのか、明確なビジョンが浮かんだ。
お兄ちゃんみたいにバスケが上手くなるって目標を失って、なにがやりたいのか分からずにいたけど……やっとわかった気がする。
渚は、しらけた目で私を見て、
「で、あたしにわざわざそれを言って、どうしたいわけ?」
「けじめ、っていうか……」
それ以外に上手い言葉が見つからず、たははっと苦笑いすると、
「あたしは、あんたが嫌い。あんたは、あたしが嫌い。だからもう、関わらない。それでいいでしょ?」
渚はそれだけ言って、私に背を向ける。
だけど、
「ええっ⁉︎私、渚のこと嫌いじゃないよ⁉︎」
「は……?」
ふいをつかれたように、渚が目を見開く。
「だって渚は、みんなが私の悪口を言ってる時も、なにも言ってなかったでしょ?」
舌打ちした渚は、バツが悪そうに目をそらす。
「……止めもしなかったけどね」
それはたぶん、私への悪口を心底どうでもいいと思っていたからだと思う。
その代わり、渚は私への文句は直接ぶつけてくれた。
渚のそういう、裏表のないはっきりしたところに、あの頃の私はたしかに救われていた。
だからこれは、私の心からの気持ち。
「渚が私のことを嫌いでも、私は渚のことが嫌いじゃないよ。だって私は、他人以上に自分に厳しくて、いつだってひたむきに努力していた渚のことを、尊敬してるから!」
その気持ちは、今も変わらない。
いつのまにか震えは止まり、まっすぐに渚と向き合っていた。
そんな私に、渚は鼻を鳴らし、
「……やっぱあんたムカつくわ。あんたが何しようが知らないけど、せいぜいがんばれば?」
「うん。ありがとう!」
渚の姿が見えなくなると、
「……緊張したぁ〜!」
どっと、肩から力が抜けた。
だけど、そのかいあって今はすっごく心が軽い。
そんな私の背に、
「そろそろ帰るって呼びにきたんだけど……。渚と話せたのか?」
気づかわしげに、ガクが声をかけてくる。
「うん!伝えたいこと、伝えられた気がする」
私と渚は、もともと友達ってわけじゃなかった。
その関係は、前にも後ろに進まなかったけど。
今度、渚に会っても、もう逃げようとは思わなかった。
「そっか……。よかったな、ゆい」
「うん!ありがとう、ガク!……って、泣いてる⁉︎」
「だってお前ら、すげえギスギスしてたし……。おれのせいかもと思ったら……。マジで、よかったぁ!」
感極まったのか、泣き出すガクに、
「わっ、ガクのせいなんかじゃないって!それよりさ。私たち今日、がんばったよね?」
「……っ。だよな!おれら、すげえがんばった!」
お疲れさまの気持ちをこめて、私とガクはハイタッチする。
晴れやかなお互いの顔に、どちらからともなく笑みがこぼれた。
「渚……!」
走って追いかけると、渚はめんどくさそうにしながらも、立ち止まってくれた。
そのことに、ひとまず安堵する。
だけど、渚と向き合ったとたん。
どうしよう、なにも浮かばない……!
頭が真っ白になる私だったけど。
……ううん。難しく考える必要はないんだ。
今はただ、素直に自分の気持ちを伝えよう。
ひと呼吸して、気持ちを落ち着けた私は、
「……渚に、マネージャーになったのは逃げだって言われて、最初はそうなのかもって思った。だけど、ついさっき違うって分かったんだ」
黒川にありがとうって言われて。みんなの笑顔も見られて。こんな私でも、みんなの役に立てるんだって、うれしくなった。
栗林との約束で、試合に負けたらマネージャーをやめることになっていたけど。
今は、マネージャーをやめずにすんでよかったって、心の底から思ってる。
「マネージャーは、私がやりたいと思ったから、やるの。今度は、みんなに迷惑をかけるんじゃなくて、チームの一員として貢献できるようにがんばりたい!」
声に出して宜言すると、自分がどうなりたいのか、明確なビジョンが浮かんだ。
お兄ちゃんみたいにバスケが上手くなるって目標を失って、なにがやりたいのか分からずにいたけど……やっとわかった気がする。
渚は、しらけた目で私を見て、
「で、あたしにわざわざそれを言って、どうしたいわけ?」
「けじめ、っていうか……」
それ以外に上手い言葉が見つからず、たははっと苦笑いすると、
「あたしは、あんたが嫌い。あんたは、あたしが嫌い。だからもう、関わらない。それでいいでしょ?」
渚はそれだけ言って、私に背を向ける。
だけど、
「ええっ⁉︎私、渚のこと嫌いじゃないよ⁉︎」
「は……?」
ふいをつかれたように、渚が目を見開く。
「だって渚は、みんなが私の悪口を言ってる時も、なにも言ってなかったでしょ?」
舌打ちした渚は、バツが悪そうに目をそらす。
「……止めもしなかったけどね」
それはたぶん、私への悪口を心底どうでもいいと思っていたからだと思う。
その代わり、渚は私への文句は直接ぶつけてくれた。
渚のそういう、裏表のないはっきりしたところに、あの頃の私はたしかに救われていた。
だからこれは、私の心からの気持ち。
「渚が私のことを嫌いでも、私は渚のことが嫌いじゃないよ。だって私は、他人以上に自分に厳しくて、いつだってひたむきに努力していた渚のことを、尊敬してるから!」
その気持ちは、今も変わらない。
いつのまにか震えは止まり、まっすぐに渚と向き合っていた。
そんな私に、渚は鼻を鳴らし、
「……やっぱあんたムカつくわ。あんたが何しようが知らないけど、せいぜいがんばれば?」
「うん。ありがとう!」
渚の姿が見えなくなると、
「……緊張したぁ〜!」
どっと、肩から力が抜けた。
だけど、そのかいあって今はすっごく心が軽い。
そんな私の背に、
「そろそろ帰るって呼びにきたんだけど……。渚と話せたのか?」
気づかわしげに、ガクが声をかけてくる。
「うん!伝えたいこと、伝えられた気がする」
私と渚は、もともと友達ってわけじゃなかった。
その関係は、前にも後ろに進まなかったけど。
今度、渚に会っても、もう逃げようとは思わなかった。
「そっか……。よかったな、ゆい」
「うん!ありがとう、ガク!……って、泣いてる⁉︎」
「だってお前ら、すげえギスギスしてたし……。おれのせいかもと思ったら……。マジで、よかったぁ!」
感極まったのか、泣き出すガクに、
「わっ、ガクのせいなんかじゃないって!それよりさ。私たち今日、がんばったよね?」
「……っ。だよな!おれら、すげえがんばった!」
お疲れさまの気持ちをこめて、私とガクはハイタッチする。
晴れやかなお互いの顔に、どちらからともなく笑みがこぼれた。

