春ヶ丘中学校男子バスケ部〜マネージャーになんてなりません⁉︎〜

【16】
シューズも見つかって、一件落着!といきたいところだけど、
「約束は、ちゃんと守ってもらうからね!」
「ひっ……!」
こそこそ逃げようとしていた栗林の前に立ちはだかり、堂々と告げる。
「僕も栗林くんたちには、聞きたいことが山ほどあるんだ」
笑みを浮かべた明野くんだけど、その目は笑っていない。
というわけで、明野くんの監督の下。
黒川は、栗林たち元チームメイトと向かい合っていた。
「ぐっ……。黒、川……。色々と……すみません、でした」
栗林は、まだ納得がいってないみたい。
だけど、となりの明野くんが怖いらしく、素直に謝っていた。
私は黒川たちの話を邪魔しちゃいけないと、その様子をこっそりかげから見守る。
本心はともかく、形式上、栗林たちの謝罪を受けた黒川は、
「……ゴール、自分で決めないと気持ちよくないって思ってた」
栗林たちの謝罪に関しては、何も言わず、
「けど、さっきのゴールはみんなで勝ち取ったって感じで、すげえ気持ちよかった」
「なっ……⁉︎」
黒川の発言によほど驚いたのか、栗林たちがざわつく。
「あと、お前らのことは許さない」
黒川は、話はそれだけだとばかりにきびすを返す。
その背に、
「黒川くん!」
呼びかけたのは、明野くんだ。
「次こそは、フルで戦おう。もちろん、勝つのは僕たちだ」
明野くんは続けて、
「栗林くんたちのことは、安心してくれ。僕と部長でしっかりと指導しておく」
「ひっ……!」
おびえる栗林たちは、真っ青を通り越して真っ白な顔をしている。
明野くんって、実はすごく怖かったりするのかな……?
そんなことを考えている間に。
わっ、黒川がどんどん近付いてくる!
かといって隠れる場所もなくて、あわてて壁のほうを向いて顔を隠すと、
「盗み聞きか?」
「ち、違うよ……!」
あせる私に、黒川は笑って、
「冗談だよ。それに、あんたになら聞かれてもいい」
「えっ?」
黒川は、私が自分のほうに向き直るのを待って、
「……あんたがマネージャーでよかった。ありがとな、ゆい」
今までで、一番の笑顔を浮かべた。
風に吹かれながら、その笑顔に見惚れていると、
「……って、ええっ⁉︎今、名前……!」
「あってるだろ?ガクが、そう呼んでた」
「そうだけど……」
まさか、黒川が名前で呼んでくれるなんて。
仲間だって認めてくれたみたいで、すっごくうれしい!
私は照れ笑いを誤魔化すように、ごほんとせきばらいをして、
「中学初試合、勝利おめでとう、黒川!」
「サンキュー」
挙をぶつけると、本格的に仲間って感じだ。
私はすっかり浮かれていたんだけど、
「このあと、どうする?渚」
ふいに聞こえた名前に、びくっと肩がゆれた。
反射的に視線を向けた先には、
「な、渚……」
グループの中で、ひときわ背が高い女の子。
どこか気だるげな、圧倒的強者の目が私をとらえる。瞬間、ぶるっと全身が震えた。
ど、どうしよう……!
渚に会わないように、帰るつもりだったのに!
いたたまれなくなった私は、
「い、行こう、黒川……!」
黒川のそでを引いて、その場を離れようとする。
だけど、渚のことが気になっているのも事実で……。
そんな私の気持ちを見透かしたのか、
「お前は、このままでいいのかよ?」
黒川に言われて、ハッとする。
黒川は、成り行きとはいえ、元チームメイトたちと向き合った。
ここでまた逃げたら、私は一生、あの日のことを引きずる気がする。
「……ううん。よくない」
深呼吸をした私は、腹をくくって、
「私、ちょっと行ってくる!」