「部長……⁉︎」
「あれだけの大声だったからな。事情は分かった。この件の始末は、おれがつける」
私と黒川の前に出た部長は、
「うちの部員に言いたいことがあるなら、部長のおれが聞く」
「……っ。先につっかかってきたのは、そっちだろ」
大和先輩の迫力にビビったのか、目をそらした栗林はぼそぼそと言って、
「つ、つーか!こいつのバッシュなんて、マジで知らねえから!」
そう、しらを切られてしまえば、それ以上追及のしようがない。
とりあえず、殴り合いにはならずに済んだものの、「……悪いが、黒川。シューズがなければ、試合には出してやれない」
「……っ!」
黒川は、はじかれたように部長を見る。
「なんで、だってさっきは!……っ、だれかのシューズを借りれば、」
だけど部長は、その決定をくつがえす気はないらしく、
「履きなれないシューズで激しく動くのは、ケガのもとだ。今日は幸い、公式戦じゃない。見ることも勉強だ」
部長の言うことは、もっともだ。
だけど、せっかく黒川が試合に出られることになったのに……。
言葉を失い、だまりこむ私たちに、
「あの約束、覚えてるだろうな?」
いきおいを取り戻した栗川が、にやつきながら言う。
約束って、“うちの学校が試合に負けたら、黒川も私もバスケ部を辞める”ってやつ?
今は、それどころじゃないのに……!
「黒川が試合に出ようが、出まいが、約束は守ってもらうからな」
栗林は蛇のような目で私たちをねめつけると、高笑いして行ってしまう。
む、ムッカつくー!あの背中に、思いっきり飛び蹴りを食らわせてやりたい!
頭の中でシミュレーションを繰り返していると、
「クッソ……!どうしていつも、こうなるんだよ……!」
しゃがみ込んだ黒川は、額の前で拳をにぎりしめてうつむく。
黒川の悲痛な声に、胸をかきむしられるような、もどかしさを覚える。
やっぱり……このままじゃ、ダメだ。
部長は、見ることも勉強だって言ったけど。
今日は絶対に、黒川に試合に出て欲しい!
いてもたってもいられず、栗林を問いただそうとした時、
「高坂。おれの話をよく聞け」
部長は、まっすぐに私を見つめる。
その目は、自分の意図を汲み取ってくれ、と言っているみたいだった。
それはきっと、部長という立場がある、先輩の口から言い出すことはできないことで。
だけど、試合に出ることはない、マネージャーの私なら……。
ハッとした私は、
「部長……!私に、黒川のシューズを探させてください!」
これだよね?部長が、私に託したいこと!
「私が、黒川のシューズを見つけます!」
黒川は、揺れる瞳で私を見つめる。
私は、大丈夫って言うみたいにうなずいて、
「マネージャーの仕事は、選手が最大限に力を発揮できるように、サポートすることだから!」
今は何より、黒川に試合に出て欲しい。
だって……悪意ある人のせいで、黒川が好きなものを奪われるなんておかしいよ。絶対に見過ごしたくないし、見過ごせない!
小学生の時は、黒川のことを守れる人が、そばにいなかったかもしれないけど……。
黒川に、もう二度と同じ思いなんてさせない。
今度こそ、マネージャーの私が黒川を守るんだ!
「だから、お願いします部長!」
もう一度、頭を下げた時、
「おれからもお願いします、部長!ゆいと一緒に行かせてください!」
「えっ⁉︎ガク……?」
まさかの行動に目をまたたいていると、
「黒川は、ベンチで待って準備運動しとけ!シューズは、おれの貸してやる!」
ガクは、覚悟はとっくに決まったというように。
ダンッ!と黒川の足元に、自分のシューズをたたきつける。
そういうことなら、百人力だ!
私は、まだしゃがみこんだままの黒川の手に、自分の手を重ねると、
「私たちが、絶対に見つけるから!待ってて、黒川!」
「……っ」
黒川は、なにか言いたげに口を開いたものの。
ぐっと、なにかを飲み込むようにして、
「……っ。頼んだ」
「「任せて(とけ)!」」
私とガク、二人分の返事が重なる。
うなずいた部長は、
「全責任は、部長のおれが持つ。くれぐれも無茶はするなよ、二人とも」
「「はい!」」
こうして私たちは、黒川のシューズを探すため、走り出した。
▽
そう、走り出したんだけど……。
「どうしよう、ぜんっ、ぜん見つからないよー!」
「やべえって、第一Q(クオーター)終わったって!」
バスケの試合は、第四Qまで。休けい時間をふくめて、だいたい二時間前後だ。
せめて第四Qがはじまる前には、黒川にシューズを届けたい。
急がないと、試合が終わっちゃう!
なのに、
「あっ、あの棚の裏、あやしくね⁉︎」
「……っ!ダメだよ、ない……!」
タイムリミットが迫っているのに、手がかり一つない。
もう、あいつら、どこにかくしたのよ!
黒川が待ってるのに……!
私は校舎内を駆け回りながら、心の中で嘆いた。
「あれだけの大声だったからな。事情は分かった。この件の始末は、おれがつける」
私と黒川の前に出た部長は、
「うちの部員に言いたいことがあるなら、部長のおれが聞く」
「……っ。先につっかかってきたのは、そっちだろ」
大和先輩の迫力にビビったのか、目をそらした栗林はぼそぼそと言って、
「つ、つーか!こいつのバッシュなんて、マジで知らねえから!」
そう、しらを切られてしまえば、それ以上追及のしようがない。
とりあえず、殴り合いにはならずに済んだものの、「……悪いが、黒川。シューズがなければ、試合には出してやれない」
「……っ!」
黒川は、はじかれたように部長を見る。
「なんで、だってさっきは!……っ、だれかのシューズを借りれば、」
だけど部長は、その決定をくつがえす気はないらしく、
「履きなれないシューズで激しく動くのは、ケガのもとだ。今日は幸い、公式戦じゃない。見ることも勉強だ」
部長の言うことは、もっともだ。
だけど、せっかく黒川が試合に出られることになったのに……。
言葉を失い、だまりこむ私たちに、
「あの約束、覚えてるだろうな?」
いきおいを取り戻した栗川が、にやつきながら言う。
約束って、“うちの学校が試合に負けたら、黒川も私もバスケ部を辞める”ってやつ?
今は、それどころじゃないのに……!
「黒川が試合に出ようが、出まいが、約束は守ってもらうからな」
栗林は蛇のような目で私たちをねめつけると、高笑いして行ってしまう。
む、ムッカつくー!あの背中に、思いっきり飛び蹴りを食らわせてやりたい!
頭の中でシミュレーションを繰り返していると、
「クッソ……!どうしていつも、こうなるんだよ……!」
しゃがみ込んだ黒川は、額の前で拳をにぎりしめてうつむく。
黒川の悲痛な声に、胸をかきむしられるような、もどかしさを覚える。
やっぱり……このままじゃ、ダメだ。
部長は、見ることも勉強だって言ったけど。
今日は絶対に、黒川に試合に出て欲しい!
いてもたってもいられず、栗林を問いただそうとした時、
「高坂。おれの話をよく聞け」
部長は、まっすぐに私を見つめる。
その目は、自分の意図を汲み取ってくれ、と言っているみたいだった。
それはきっと、部長という立場がある、先輩の口から言い出すことはできないことで。
だけど、試合に出ることはない、マネージャーの私なら……。
ハッとした私は、
「部長……!私に、黒川のシューズを探させてください!」
これだよね?部長が、私に託したいこと!
「私が、黒川のシューズを見つけます!」
黒川は、揺れる瞳で私を見つめる。
私は、大丈夫って言うみたいにうなずいて、
「マネージャーの仕事は、選手が最大限に力を発揮できるように、サポートすることだから!」
今は何より、黒川に試合に出て欲しい。
だって……悪意ある人のせいで、黒川が好きなものを奪われるなんておかしいよ。絶対に見過ごしたくないし、見過ごせない!
小学生の時は、黒川のことを守れる人が、そばにいなかったかもしれないけど……。
黒川に、もう二度と同じ思いなんてさせない。
今度こそ、マネージャーの私が黒川を守るんだ!
「だから、お願いします部長!」
もう一度、頭を下げた時、
「おれからもお願いします、部長!ゆいと一緒に行かせてください!」
「えっ⁉︎ガク……?」
まさかの行動に目をまたたいていると、
「黒川は、ベンチで待って準備運動しとけ!シューズは、おれの貸してやる!」
ガクは、覚悟はとっくに決まったというように。
ダンッ!と黒川の足元に、自分のシューズをたたきつける。
そういうことなら、百人力だ!
私は、まだしゃがみこんだままの黒川の手に、自分の手を重ねると、
「私たちが、絶対に見つけるから!待ってて、黒川!」
「……っ」
黒川は、なにか言いたげに口を開いたものの。
ぐっと、なにかを飲み込むようにして、
「……っ。頼んだ」
「「任せて(とけ)!」」
私とガク、二人分の返事が重なる。
うなずいた部長は、
「全責任は、部長のおれが持つ。くれぐれも無茶はするなよ、二人とも」
「「はい!」」
こうして私たちは、黒川のシューズを探すため、走り出した。
▽
そう、走り出したんだけど……。
「どうしよう、ぜんっ、ぜん見つからないよー!」
「やべえって、第一Q(クオーター)終わったって!」
バスケの試合は、第四Qまで。休けい時間をふくめて、だいたい二時間前後だ。
せめて第四Qがはじまる前には、黒川にシューズを届けたい。
急がないと、試合が終わっちゃう!
なのに、
「あっ、あの棚の裏、あやしくね⁉︎」
「……っ!ダメだよ、ない……!」
タイムリミットが迫っているのに、手がかり一つない。
もう、あいつら、どこにかくしたのよ!
黒川が待ってるのに……!
私は校舎内を駆け回りながら、心の中で嘆いた。

