ガラーン、ガラーン ───
村中に、鈍い鐘の音が響き渡る。
「父さん・・・これ」
「落ち着け」
ガラーン、ガラーン ───
「魔物ー!魔物だー!今すぐ逃げろ、魔物だー‼」
続いて太い男の声が響き、母さんと弟たちが抱き合った。
「母さん、どうしよう、怖い・・・!」
「おぉ、どうしましょう・・・!」
母さんは、オロオロしながらも弟たちを守るように抱きしめ、助けを求めるように父さんを見た。
「セラ、・・・!」
父さんがなにかを言おうとするのを遮って、俺はすぐに近くの梯子に走った。
そのまま勢いに任せて梯子を上り、家の屋根に出る。
目を凝らすと、森のほうに土ぼこりが上がっていた。
「火、・・・記憶!」
こちらに向かって走ってきているのは、2種類の魔物だ。
片方は、通常の大きさの二回りくらい大きいイノシシで、これは火の魔物。
もう片方は、村の大男と同じくらいの大きさのサルで、これは記憶の魔物。
後者の魔物は、人の最期の記憶を吸い取り、『記憶の泉』という未知の泉にとばすのだ。
いや、でも死ぬときはみんな一緒。
だから、記憶が亡くなろうと、その記憶を求めることはない・・・。
「父さん!火と記憶だ!もうこっちに来る!数もとてもかないそうにない!」