「こんにちは~」

「あ、夜空(のあ)ちゃん。今日もよろしくねー」

「はい!」



ここでは夜空という名前で明るく振舞っている。
キャバは客とだけでなく、他の従業員との交流も大事だからね。
私の出番は18時から。さ、準備しなきゃ。



「じゃあ私準備してきますねー」

「行ってらっしゃーい」



私は裏の部屋に行ってキャバ嬢の私になる。
髪を少し巻き星をモチーフにした髪飾りをつける。メイクは濃い目に、でも素材を活かすように。服は名前の通り夜空のような色の、かっこよさと可愛さを兼ね備えたロング丈のドレス。

よし、出来た。
鏡を見るとそこには店No.1にふさわしい、可愛さと綺麗さを兼ね備えたキャバ嬢、「夜空」がいた。

圧倒的な美しさ、洗練された動作、振りまく愛想と色気、その中にある少女らしい清楚さ、その全てが客に気に入ってもらうための計算。
この世界はそうやって生き残る。

18時になる。もう行かないと。



「準備終わりましたー」

「おっけー、お客さん来るから行ってきな」

「はい!」



この日は太客の来店予約がある。その人は高級なシャンパンも入れてくれるため、丁寧にもてなす。



「こんばんは〜!夜空ちゃん、来たよ」

「あ!典之(のりゆき)さん、待ってましたー!」

「いやー、ごめんね。仕事が長引いちゃって予約時間すぎちゃった」

「全然大丈夫ですよ〜。でも、ちょっと寂しかったです…」

「ごめんごめん。じゃあ今日は、お詫びにエンジェル入れてあげるね」

「えー、ありがとうございますー!でも、気を使わなくても大丈夫ですからね?典之さん、今月だいぶ使っているみたいだから心配で…」

「全然大丈夫だよー。僕結構稼いでるから」



エンジェルか……。
確かに高級なお酒ではあるが、本音を言うと足りない。
でもここで欲張っては好感度が下がってしまう。