ガチャ



「新、来たよ」

「月、来るの早いな」

「疲れた」



そう言いながら、私は椅子に座って書類を整理していた新のもとへ駆け寄る



「どした?」

「王龍に絡まれた」

「あー。災難だったな。あいつらはしつこいぞー」

「最悪」



さりげなく疲れているアピールをすると頭をなでてくれた。気持ちいい。



「コーヒーある?」

「あるぞ。持ってくるからちょっと待ってな」



新は理事長室内にある冷蔵庫に向かい、コーヒー缶を出して私に投げた。



「ほいっ。悪いな。今豆を切らしてて一から淹れてやることができないから。これで我慢してな」



私は冷たい缶をキャッチする。新の淹れたコーヒーが飲めないのは残念だ。



「分かった。次来る時は、新の淹れたコーヒー飲ませろよ」

「おう。約束な」



約束…。絶対守ってもらうからな。

もらった缶コーヒーを飲む。うん。まあまあだな。新のコーヒーには敵わない。



「んな微妙そうな顔すんなって」



…。私は知らずのうちに微妙そうな顔をしていたらしい。



「………。美味い、よ」

「…。そうか。悪かったな」



新には誤魔化しは通用しなかったみたいだ。