陥れられた護衛悪役令嬢は婚約破棄からの追放を受け、Vtuberになることにしました。


 いやいや、配信者たるものゲームの面白さを広めようというのは当然のことだ。
 ゲームを実際プレイする姿を見せて、視聴者さんに楽しさを伝え、あわよくば購入していただきゲームの売り上げに貢献する。
 みんな幸せになれる。
 それがVtuberのゲーム実況だと思う。
 ――なんて……まだまだVtuberとしては駆け出しの私が偉そうに言うことでもないけれど。
 
「まあ、リスナーさんから『ナターシャさんと茉莉花さんの恋愛相談配信やってほしい』というお声がたくさんありますわよ」
「えー、面倒くさいですねー」
「ナターシャの恋愛相談配信わたしもよく見るからわかる〜。え、そこにわたしも? いいのかしら?」
「いいんじゃないんですか? 茉莉花お姉ちゃん、そろそろ結婚とか考えてるって言ってたじゃないですか。本当のお姉ちゃんになってほしい」
「ちょ、ちょっとやめてよ〜。え〜〜〜っ」

 え? 本当のお姉ちゃん……?
 どういうことなのか思わず茉莉花さんと甘梨さんの方を見てしまうと、ナターシャさんが「ああ、知らない方も多いと思うんですけれど、茉莉花は甘梨さんのリアルお兄ちゃんと交際中なんですよ」と暴露。
 そ、そんなプライベートなことをここで暴露してもいいのか!?

「いいんですか!? えええ!? Vtuberがリアル恋愛してていいんですか!? ええええ!?」

 一番驚いているのがオリヴィア先輩。
 オリヴィア先輩の声にびっくりした。
 Vtuberが恋愛をするってそんなに珍しいことなのか?

「りゅうせいぐん☆はそういうのアリ寄りのアリ事務所なんですよ。甘梨ちゃんも後輩の男の子に毎日熱烈アピールされているんですよね〜」
「や、やめてください! 鳩禁止ですっ」
「あ、そうだった。ごめんね」
「本配信で匂わされた人物への凸、関係者への誹謗中傷などのうち悪質と判断したものについては法的処置も検討しますので愚民どもは気をつけてくださいね〜。弱小事務所の集まりだからって舐めてると人生終了させますよ〜」

 容赦がないナターシャさん。
 まあ、枠主なので当然の対応。
 コメント欄を見る限りそのような者はいないが……。
 恋愛ごとは確かに燃えやすいと研修で学んだ。
 その点を考えると、確かにそんな燃えやすい話を他人の枠でするのは……と思ってしまう。

「りゅうせいぐん☆さんは……アリなのですか……そうなのですね」
「あら、オリヴィアは誰か気になる殿方がいるんです?」
「別にいません」
「いるのね」
「フィルネルク?」
「やめてください。同期なんです。仕事がしづらくなります」
「まあ、それはそうですね」
「それに、婚約破棄された挙句暗殺者まで派遣されたのですよ。わたくし、しばらくは恋愛をしたいと思いませんわ」

 普通に聞いたら、婚約破棄された挙句戦場に送り込まれ、さらには暗殺者まで送り込まれたら確かにしばらく恋愛はしたくない。しなくていい。と、思うだろう。
 実際私も婚約者? なにそれ美味しいの? そんな存在いた? っという感じだし。

「アネモネちゃんは? 恋バナとかどう?」
「私に婚約者はいません。そんな存在最初から」
「あ、これは聞いたらいけないやつだ」
「アネモネも冤罪を被せられた挙句、婚約破棄されて一家連座で国外追放でしたからね」
「へ、へえー」

 茉莉花さんと甘梨さんは私の“設定”が本当だとは思っていないから、きっとそれに近い事情、程度にしか思っていない。
 それでもかなり酷い話なので、表情は困惑気味。
 あまり深く聞かない方がよさそう、と顔に出ている。
 とても気遣いのできる、優しい人たちだと思う。
 なので私は恋バナとかそういうのありません。
 触れないでください。

「ナターシャちゃんは――ナターシャちゃんにリアルで恋愛相談するの怖いのよね〜」
「え? そうなんですか?」
「もうめちゃくちゃズバズバ言うから、なんかよくないこととか言われたらどうしようって思っちゃうの。甘梨ちゃんなら聞いてもいいんじゃない? 現在進行形の話だと普通に怖いのよね」
「言っておきますけど無料ではやりませんよ」
「え! おいくらお支払いすればいいんですか……!?」
「相談する気満々ですか。……まあ、そうですね……今度人を集めた企画をやる時スケジュールを都合つけていただけたらいいですよ」

 にこり。
 ナターシャさんが微笑むので、これはあれだ。
 “貸し1”だ。
 怖いやつだ。
 甘梨さんはその恐ろしさがわかっていない。
「わかりました!」と元気よく答えてしまう。

「なにを聞きたいです? ガチ恋愛相談です?」
「うーん、うーん。えっと、じゃあお兄ちゃんと茉莉花お姉ちゃんの今後について知りたいです!」
「甘梨ちゃん!?」

 なぜか「怖いから」と避けていた茉莉花さんに飛び火した。

「うーん。まあ、別に。順調だと思いますよ」
「ほ、本当? 本当に?」
「そもそも茉莉花は恋愛に関してお子ちゃまなんですよね。恋愛初心者。お相手男性も同じ。レベルが同じなので一緒に成長していっているんですよ。お相手男性も誠実で、脇目も振らずタイプ。浮気の心配がないタイプなので、特に問題らしい問題は起こらない。逆に言うと仕事ですれ違いが連続すると、順調だった分不安定になりやすい。恋愛初心者同士なので、疑心暗鬼にも陥りやすいが注意ですね。要は『二人の時間をちゃんと作って、話し合いをしなさい』です。これはどんなカップルにも同じことが言える、基礎中の基礎なので、別に茉莉花たちに限ったことではないんですけれど」
「ほ、ほーーー……」

 茉莉花さん、すごく嬉しそう。
 しかし、こんなに大人のお姉さんなのに恋愛初心者なのか……。
 なんかちょっと親近感。