──日永叶南。いつ聞いても、いつ見てもくすぐったくて身体いっぱい、ぽかぽかと温まる。


 二年前のあの日、好きの言葉と一緒に第二ボタンをもらって、それからすぐ、左手薬指に約束をはめた。恋人兼婚約者として一年を過ごして、籍を入れて、また一年。産休に入っていた先輩、春田さんと入れ替わるように、今度はわたしが新たな命を咲かせることになった。



 柊と結婚して退職も考えたけれど、あのとき勇気を出して掴み取った地位と環境でまだ頑張りたかったから、産休と育休の取得を選択した。マイクレでリリースしたクレジットカードも順調で、まだまだこの会社でやりたいことはたくさんあった。育休明け、落ち着いたら改めて異動希望を出す予定だ。


 「養わせてくれないのも叶南らしいし、そんなところが好き」って笑ってくれたから、柊の助けも借りて一緒にしあわせな家庭を築いていこうと思う。



 「それじゃあ行こうか、叶南」



 差し出された柊の手のひらに、自身のそれを迷わず重ねた。もう、離したくない温度。


 今日も変わらずひいらぎの香水に、ひいらぎをかたどったピアス、あの時もらった第二ボタンを手にして。左手薬指、煌めくシルバーは今後を一緒に過ごす永久保証。




 ふたりでエンドロールまで過ごしたら、終止符を打ちましょう。


 ──叶えたロマンティックの続きを。



 -fin-