「高校生の俺、だせーな」
「わたしは嬉しかったからいいの。ほんとに守ってくれてるみたいで、香水も買い直したんだから。ピアスも、ひいらぎのお花に似てたから自分で買ったの」
「ならいいや。叶南が嬉しいならなんでもいい」
見上げた先、柊の後ろにそびえ立つ大きな木はひいらぎだろうか。白が、ちらほらと咲き始めていた。
「なぁ、叶南」
「……なに?」
「さっきの第二ボタン、俺ももう高校生じゃないので。すぐにここの約束に、変えるから」
「……え」
いつも余裕で完璧な彼が、ちょっぴり熱を持ってそんなふうに言うから。彼が撫でたわたしの左手薬指に熱が移る。幸せな温度が全身に広がってゆく。
「今度はもう待たないからね」
「臨むところだよ、待たせないから」
笑い合って、喧嘩して、たまに素直になって。そうやって隣にいよう。
どこまでもついていくし、ついてきてもらうから、覚悟してね。
もう一度、どちらともなく重なる唇の温かさが、わたしの心に幸せのひかりを灯してくれた。



