「芽奈、お疲れさま。ごめんねお先に!」
「いーえ。日永さんとお幸せに〜」
「な、なんで知って……っ」
「さぁね? また事情聴取させてもらうからね〜!」
楽しそうに口角を上げて、ひらり手のひらを揺らめかせた芽奈に挨拶をして、ビルを出てすぐにある公園に向かう。芽奈のこの様子だと、やっぱり前に言っていた「名取のことよろしく」は十中八九、彼だ。
7センチのヒールで地面を踏みつけて、かつかつと音を鳴らす。だんだんリズムが速くなる、自然と足が動く。
すっかり日の入りが早くなった10月。太陽の代わりに訪れる星や月、オフィスビルの光が煌めいている。そんな秋空の下、都会にちょこんと存在する公園、花壇の近くでしゃがみ込む人物。
卒業式の日と全く同じで、立場が反対になっているだけだった。あの日、待っても待っても来てはくれなかった柊が、わたしを待っていた。



