叶わぬロマンティックに終止符を



 ◻︎


 わたしが訴えずとも、その日のうちに部長の自主退職(という名の事実上の解雇)が決まった。すぐに社長室に呼び出されて事情聴取が始まったらしい。


 聞くところによると部長のモラハラが原因で離婚協議中だったとか。社長からは「長年辛い思いをさせてしまって申し訳なかった」と謝罪をされてしまった。もちろん受け入れたけれど、生意気とは自覚しつつも改善を求めた。今までのわたしならきっと、何も言えなかった。勇気をくれたのは間違いなく柊だった。



 明日になればわたしと柊のことは会社全体に伝わるだろう。柊はプロジェクトメンバーと取締役を前にしてわたしを庇ったし、下の名前で呼んだ。隠そうともしなかった、それはわたしの心を守るために他ならなかった。


 ──きちんと、わたしの口で伝えたいから。金曜日でもないのに、18時を過ぎたら通知がぴこんと軽やかに鳴った。



 《待ってる》

 《交差点横の公園》



 送られてきた二通を確認、柊の画面には既読の文字が送られているだろう。今日は部長から理不尽に仕事を押し付けられていない。まだぽつぽつと人が残る執務室を自分が先に出るのが新鮮だった。