会議室真ん中に座る社長の、斜め後ろのそのまた後ろ。憎き部長がわなわなと震えていた。



 「そんなにも名取さん、ひいては女性社員の活躍が気に入らないのでしょうか」


 「き、君は何を言っているんだ。そんなことは……」


 「部長がそのような態度ならば、こちらはさらなるハラスメントの証拠を提示します。録音をここで流しますがいかがしましょう?」



 「や、やめてくれ! わかったから!」と頭を抱えた部長。この場の視線は柊と部長の二人が奪っていた。「大丈夫だよ」とわたしにだけ聞こえる柔らかな声が鼓膜を揺らした。立ち上がってから一度、柊を見上げて、震えそうな唇を動かす。


 「取り乱してしまい、申し訳ございませんでした」


 わたしが何を言いたいかわかっているような、見守るような視線を送られた。机の下、バレないようにそっと手を繋いだ。返してくれる体温が安心感をもたらしてくれた。あぁ、わたし、大丈夫だ。変われる。