ダークブラウンの瞳が揺れた。切なげに伏せて、わたしを視界に映す。何か、確信を伝えようとしてくれている。わかる、わかったのに、神さまはわたしの味方をしてはくれなかった。
がた、と力強くドアが開く音。さっき柊が来たときには全く気が付かなかったのに。
慌てて身体を離す。何もなかったみたいに。
「お疲れさまです巡回ですー、また施錠にきますねー」
「……はい、ありがとうございます」
間延びしたその声は、わたしにとってはもうお馴染みの警備員さんのものだった。いつも19時ごろに巡回で訪れること、すっかり頭から抜け落ちていた。
「続きは、また今度」
はぁ、とため息ひとつ。こぼしたのは柊。なにを憂いたのか。都合よく、考えそうになってしまう。
「……なに、今度って」
「今度だよ、今度。とりあえず早くビールが飲みてーの」
「好きだもんね」
「そ」
柊は生ビールが好きであることをこの一ヶ月で知った。
わたしのことは?って、聞けたらよかった。
窓の外は街灯やオフィスの光がはしゃぐから、散らばった星たちは身を潜めている。眠っていた恋心も照らされて輪郭を描くから、もう、戻れない。
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