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怒られない日、嫌味を言われない日を数えたほうがきっと早い。日々に忙殺されていれば誕生日の予定が真っ白であることにすら気を向けられずにいた。
「名取〜、お疲れ」
「お疲れ、芽奈」
誕生日当日の金曜日。今日も今日とて理不尽を受けた午前を抜けて、昼休みにビル15階の休憩スペースを利用していれば。理不尽ぶつけられ仲間兼同期である、岡井 芽奈が声をかけてくれた。わたしの好きな、激甘カフェオレ付き。荒んだ心と濁った瞳が復活する気がした。
「ありがと。今日もあのハゲぶっ飛ばしたかったけど、芽奈のおかげで元気出た」
「あははっ相変わらず絶好調! あたしも今日すでに100回は頭の中であのぽよぽよの腹をパンチした」
「普通にわたしよりひどい」
一見、綺麗すぎるがゆえにとっつきにくい印象を与える芽奈だけど本当はすごく表情豊かで可愛らしい。はっきりした性格は確かに人を選ぶけど、わたしはそういうところもむしろ好きだ。



