顔は見えない。直接届けられる温かな言葉にまた泣きそうになった。滲んだ涙を隠したくて、ぎゅっと胸に顔を押し付けた。そして誤魔化すように、かわいくなさをぶつける。
「……違う人みたい」
「俺、叶南以外には紳士なの」
わたし、以外。
高校の時からそうだ。わたしは柊の、優等生じゃないところも知っている。本当はあんまり口が良くなくて、めんどくさがりで、ちょっと冷たい。だけど優しいのは変わらない。わたしに見せる不器用な優しさが好きだった。……今も、好き。
「わたし以外にはこういうこと、するんだ」
「さぁね。叶南以外にはしたくないけど、どうだろ」
わたしの髪を梳かすように撫でる。絶対にわたし以外にしている、絶対そう、慣れすぎている。
……けど、わたし以外にはしないでほしい。



