叶わぬロマンティックに終止符を




 ◻︎


 柊との時間がマストになりつつある金曜。定時5分前、17時55分。週明けに控えたマイクレ中間報告会の資料確認をするのみで終われるはずだった。重役も出席するから、念入りに確認をして、それから帰ろうと意気込んでいたそのタイミングで、最悪が訪れてしまった。


 「名取、パソコンの設定やっとけよ」

 「……今から、ですか?」

 「今じゃなかったらいつ? 今日中」


 最も聞きたくないべたつくような声に冷めた視線。心の底からわたしを見下すその表情に一年目こそ反抗的に睨みつけていたけど、その気力も徐々に失われていった。むしろ悪化するばかりで、ならば大人しく従うほうがマシだった。


 「…………はい」


 背中に隠した左手でグーを作る。コーラルピンクに彩った爪がめりこんで、痛い。