叶わぬロマンティックに終止符を



 「だーかーらー! あんたと日永さんとの関係! あんなイケメンと関わる機会滅多にないんだし、狙っちゃえば?」


 「いやいや。狙ったところで、なんにもないよ」


 「だって名取、会社では疲れ切った顔してるけど本当はかなり可愛いじゃん。それにこんな頻繁に営推のフロア来てるし」


 「……前半余計だから。日永くんがよく来るのはあくまで仕事ね?」



 「そんなことないと思うんだけどなあ」と諦めていなさそうな芽奈は、すっとなんてことない顔をしてデスクの上に少し溜めてしまった書類を手に取った。その行動の意味に気がついて、すぐに静止する。


 「まって芽奈、大丈夫だよ。まだ余裕あるし気にしないで」


 「だめでーす。それにあたし、とあるひとからお願いされちゃったもん。名取のことよろしく〜って!」


 「……え? わたしを?」


 「そ。だから全然ありだと思うよ? 愛されてるね〜ふふっ」



 部長不在も相まって、わたしの書類を奪って楽しそうに帰ってしまった。


 芽奈にそんなことを言う心当たりは一人しかいない。